検証作業における人工知能との新しい協力関係
皆様がご存知の通りSoC は年々複雑になっており、その検証も同様に複雑で困難になっています。その一方でSoCを検証する技術は主に
- 言語的な発展
- 検証環境の発展
- 実行環境の発展
で複雑化する検証を支えています。"言語的な発展"はほぼ成熟期であり、そこには標準化されているSystem Verilog / e 等の高級言語の登場と、Formal を支えるSVA があります。言語的な発展は高度な検証環境の出現を可能とした一方で、多種多様な実装が可能となり複雑度が一気に増大しました。そこには機能カバレッジおよびチェッカの実装方法などの方針を標準化した UVM と VIP により再利用性を持ったランダム環境を構築するソリューションが発展しています。これが現在の"検証環境の発展"です。機能カバレッジおよびチェッカが実装され結果の収集は自動化できていますが、検証対象の複雑度に応じて、実行すべきシミュレーション本数は増大していきます。
そして、これに起因した主に2つの課題に我々は直面しています。1つ目は実行時間の増大です。ここに対して"実行環境の発展"として、シミュレータの高速化はもちろんのこと、HW による高速化の支援(エミュレータ)を年々アップグレードすることでサポートしています。2つ目は再利用性の上がった環境を引き継いだときに、カバレッジの収束性を維持したまま環境に付随しているシナリオを精査する工数も増大している点です。そのままを全て流す方法をとることも可能ですが、環境を引き継ぐ度に実行時間が増大し、検証対象の変更に伴う非効率になってしまったシナリオもそのまま流している可能性があり、効率が必ずしも良いとは言い切れません。既存の機能でシナリオの機能カバレッジ貢献度に関するランキングを取得し、乱数発生のseed固定でシナリオリストを生成できます。ただしこの手法はカバレッジのカバー率を維持できる一方で、ランダム検証の良さを失ってしまいます。
このように過去のリグレッション環境を引き継いだ場合には、人間が判断してシナリオ等を精査する必要がある一方で、短期間での開発を余儀なくされる昨今の現場にはその工数を捻出する難しさがあります。これらの直面している課題を解決すべく、一つの解となる Xcelium™ Logic Simulation with machine learning technology ( Xcelium ML ) をリリースできることになりました。
Xcelium ML はこれまで使っているリグレッションセットを解析し、元々のリグレッションセットでカバーできている機能カバレッジを維持しつつ、少ないシミュレーション数、または短い時間で実行できる新たなリグレッションセットを生成するソリューションです。このリグレッションセットではseedもランダムとなります。
実際のプロジェクトデータを用いた評価でも、元々のリグレッションに対してほぼ同等のカバー率を維持したまま、1/5 程度まで短縮することができています。
より具体的な内容を、2020年10月23日に開催予定の CadenceLIVE 2020 Japan でキオクシア株式会社より Xcelium ML を実際のプロジェクトデザインへ適用した事例を交えて発表して頂く予定です。皆様のご参加をお待ちしております。
フィールドエンジニアリング&サービス本部
システム&ベリフィケーション
加藤木 聡
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