CPF/UPF (IEEE1801)両言語をサポートし低消費電力化の設計フルフローを提供、言語戦争に終止符を打ちLow Power機能で勝負!
ケイデンスは、Low Power 分野のテクノロジー・リーダーと広く認識されています。ワールドワイドでのテープアウト実績も 1000 を超えて数多く存在し、様々なデザインの様々なLow Power 構造をサポートしています。
ただ、特に日本では、ケイデンスは CPF(Common Power Format)のサポートをしていて、UPF(Unified Power Format) はサポートしていない、と思われています。本稿では、そんなケイデンスの Low Power フローについて紹介します。
CPF と UPF
そもそも CPF や UPF とはどのような言語なのでしょう。
この10年ほど、各社でチップの Low Power 化が図られるようになりました。主な機能として、下図のように多岐にわたる研究・開発がなされてきました。
このような Low Power の技術をチップに実現するにあたり、シミュレータからP&R、サインオフまで数多くのツール群を動かす必要がありますが、開発の当初は、ツール毎にコマンドが用意されていました。
しかし、このような状態では
- ツール毎にコマンドが違う
- ツール間で仕様を共有することが難しい
といった問題がありました。各ツールへの入力仕様がまちまちで、設計の各段階で互いに情報をインターフェースすることができず、設計者間やユーザーとベンダー間での仕様の誤解や設計ミスが生じる原因にもなっていました。
そこで、Low Power 設計指針を記述する標準仕様として策定されたのが、CPF や UPF です。
すべてのツールに対して共通に情報を入力することで、設計全般に渡って共通のLow Power 設計指針を共有し、設計ツールへの入力ミスや、設計ツール間の矛盾のみならず、ユーザー・ベンダー間のハンドオフで起こる様々なコミュニケーション上の不具合を解消することができます。
このような背景を持って策定された CPF と UPF ですが、Power 情報の考え方や実装のための情報の与え方等に差分があり、立ち上がりには大きな差が生まれました。
先に立ち上がったのは、CPF です。2008年に CPF1.1 がリリースされ、現在の仕様とほぼ同等の機能が含まれるようになりました。ケイデンスは、いち早く CPF1.1 のサポートを通して、様々な Low Power 設計を支えるようになりました。Low Power 分野の様々なノウハウを蓄積し、テクノロジー・リーダーとして様々なチップ開発に携わってきました。
一方 UPF は、以下のような理由から市場で受け入れられるまでに時間を要しました。
- バージョン毎にコマンドのデフォルトが変わってしまう。
- 互換の無いコマンドが追加される。
- LP セル仕様を Liberty に依存したため、Liberty のアップデートが必要になる。
- UPF1.0 では、ツール固有コマンドの併用が必要だった。
- CPFと比較して記述量が多い。
ケイデンスは、UPF の一般適用に向けた仕様の策定にも力を注ぎました。その結果、2013年の IEEE1801-2013(UPF2.1) において、UPF も CPF と同等の機能を持つようになりました。UPF が実設計で広く使用され始めたのもこの頃からです。
UPF フローの課題
CPF と同等の機能を持つようになった UPF ですが、ユーザーは以下のような理由から LRM(Language Reference Manual)に準拠した UPF に移行できませんでした。
- これまで使用していた UPF1.0 の記述の一部が UPF2.1 では使用できなくなった。
- ツール間・ベンダー間でサポート版数やサポートコマンドに偏りがあった。
その結果として、ユーザーはバージョン混在の UPF を使用するようになりました。特定のツールでのみ動作するアトリビュートも多数存在し、それらを併用してフローを構築するようになりました。この状態は UPF2.1 リリースから数年を経た現在も続いています。
バージョンが混在することの難点は、同じ Low Power 機能を表現する方法が複数存在する、ということです。様々な記述スタイルから、実現したい Low Power 機能を認識する必要があります。それも、ユーザー、ベンダー、ツール間で共通の認識としなければなりません。
IEEE1801-2015(UPF3.0) がリリースされ、ユーザーの中には LRM に準拠した UPF への統一という流れも出てきていますが、まだしばらくはバージョン混在を併用するという状態が続くと予想します。
ケイデンスのUPFサポート
ケイデンスは、UPF をサポートするにあたり、以下をツール実装の方針としています。
- LRM 準拠はもちろん、LRM に準拠していない既存 UPF も可能な限りサポートする。
- 既存UPFには、特定ツール固有のアトリビュートも含まれるため、情報は広くユーザーから入手し、ツール間でも情報を共有する。
- ただし、特定のコマンドの使い方やアトリビュートが、Low Power 実装の不確実性を招くような場合は、正しく Low Power 実装できるようユーザと密に議論する。
ケイデンスは、これまで UPF や CPF を通して様々な Low Power 実装を行ってきました。UPF が CPF と同じ機能を持つことから、使用する言語による制限はすでに無くなっています。重要なのは、使用する言語ではなく、実現する Low Power の機能なのです。Low Power 機能の実現において、ケイデンスは常に最先端を進んでいます。CPF では、10年を超えるサポート実績を積み重ねてきました。もちろん、UPF を使用したテープアウト実績も年々増加しています。
CPF だけでなく UPF でも、ケイデンスが提供する、最先端の Low Power 技術をぜひご活用いただければと思います。
フィールドエンジニアリング&サービス本部
新迫 和宏
この記事に関する問い合せ先:
コーポレート・マーケティング部
E-mail:cdsj_info@cadence.com
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