LPDDR/DDRを凌駕するポテンシャルを持つ次世代メモリGDDR6とケイデンスのIPソリューション
我々は今革新の中にいます。AI、5G、先進運転支援システム(ADAS)といった技術革新を迎え、超広帯域幅を必要とするアプリケーションが生まれ、これまで以上にハードウェアリソースを求めるようになっています。膨大なデータから新たな価値を生み出す機能、コンテンツ、体験を生み出すためにはスーパーコンピューター並みの計算処理能力が求められ、この進化を支えるためには更なるメモリ帯域が不可欠です。
今次世代メモリとしてGDDR6が注目を集めています。GDDRはこれまでビデオカード用のメモリ技術として用いられてきましたが、LPDDRやDDRを凌駕する性能を持つGDDR6は、既存分野を超えた超広帯域幅を必要とするアプリケーションでの活用が期待できます。すでにGPU、AIプロセッサ、ゲーム機などの分野で導入が検討され始めており、これらに加え自動車業界や5Gの分野にも適用が視野に入れられています。
GDDR6メモリの特長
では、GDDR6は他のメモリと比較してどのような特徴を持つのでしょうか? 以下の表はメモリ容量を32GByteと仮定した場合、得られる帯域幅とメモリコストの比較を示しています。GDDR6の転送レートは、JEDECロードマップでは16Gbpsですが、Samsungは18Gbpsを発表しています。ここでは16Gpbsを想定します。LPDDR5/4Xと比較するとGDDR6の帯域幅は2倍以上となり、1TB/s以上の帯域を実現できます。ハイエンドGPUに用いられているHBM系メモリと比較すると、次世代のHBM2Eには劣るものの帯域幅はHBM2とほぼ互角です。メモリコストの観点からは、GDDR6はLPDDR5/4Xと比較すると1~2倍程度のコスト増が想定されますが、HBM系メモリよりは低コストで実現可能です。これはHBM系メモリにおいてはLPDDR5/4Xと比較において更なるコスト増に加え、interposerやpackage等の追加費用が発生し、メモリ導入コストが大幅に増加するためです。これらのことから1GB/s単位のメモリコストという指標で見れば、GDDR6は低コストで高いバンド幅を満たす最適なソリューションになり得ます。
Note : メモリ容量32GByte想定
また、GDDR6は厳しい動作環境においても高い信頼性が求められる車載向けに対しても最適なソリューションになり得ます。メモリ帯域に関しては上述のようにHBM系に対して若干見劣りしますが、HBMはTSV積層のためウェハを薄く加工していることもあり、温度が上がりやすい特徴を持ちます。このため高温環境においても信頼性が求められる車載向けにおいては導入が困難と考えられています。しかし、GDDR6は構造上LPDDRやDDRなどこれまで車載向けに導入されてきたメモリと類似の構造を持っているため、厳しい自動車仕様にも準拠するよう設計することが可能です。また、ADASおよび自動運転が要求するものはコンピューティング能力であり、Level3およびそれ以上のLevel4やLevel5に対応するシステムにおいてはより高解像度の動画をリアルタイムで処理、保存、分析する必要があります。現在では約60GB/s未満の帯域を持つLPDDRメモリソリューションが利用されていますが、今後、Level4以上の自動運転レベルに対応する場合には1TB/s近くの帯域が必要であると予測されています。必要メモリ容量にも依存しますが、GDDR6はLPDDR5と比較して低コストでより高い帯域を実現できるソリューションとなり得ます。これらのことから、GDDR6は、自動車産業が要求する信頼性と温度範囲の制約を解決し、かつ次世代の自動運転レベルに対応する高い帯域を実現することが可能な最適なソリューションとなります。
GDDR6メモリ用Design IP
ケイデンスは、2018年11月21日にSamsungの7LPPプロセスを使用し、GDDR6メモリIPのテープアウトを完了したことを発表しました。GDDR6インターフェースの設計においては、LPDDRやDDRよりも少ないDRAMチップ数で高メモリ帯域幅することが可能になるため、プリント基板面積とパッケージピン数を削減できます。ケイデンス独自のGDDR6 IPソリューションにより、チップのインテグレーションが加速され、相互接続性におけるリスクが低減されます。さらに、このGDDR6 IPがメモリベンダーでもあるSamsungとの緊密な協業により開発されたことにより、SoCとメモリチップ間の相互接続性リスクも低減されています。また、本IPソリューションには検証IPとしてCadence GDDR6 Memory Modelが含まれており、検証ツールソリューションCadence® Verification Suiteを使用することで、高度なチェック、カバレージ、検証プラニング、モデリングが可能となり、検証ミスを防ぐ完全なIPソリューションを提供します。
GDDR6 IP Solutionについての詳細はこちらをご覧ください:
https://ip.cadence.com/ipportfolio/ip-portfolio-overview/memory-ip/ddr-lpddr/gddr6-ip-solution&CMP=DIP_GDDR6_PR_1118
次世代メモリHBM2、GDDR6の利点や比較に関する説明ビデオも是非ご覧ください(6分40秒):
https://community.cadence.com/cadence_blogs_8/b/whiteboardwednesdays/posts/whiteboard-wednesdays---the-advantages-and-trade-offs-of-hbm2-and-gddr6
ケイデンスの先端テクノロジーを用いた次世代メモリの開発により、技術革新を支えるアプリケーションの設計をお客様が開始することが可能となり、最適なソリューションを提供する準備ができています。GDDR6は低メモリ容量かつ超高帯域幅が必要となるアプリケーションには最適なソリューションです。GDDR6にご興味をお持ちのお客様は是非ともケイデンスの担当営業までご連絡ください。
設計IP リードAE
村田 直也
この記事に関する問い合せ先:
コーポレート・マーケティング部
E-mail:cdsj_info@cadence.com
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