プリント基板設計ツールAllegro:SPB23.1 最新機能の一部をご紹介
Allegro SPB23.1は、2023年10月にリリースされた最新バージョンです。前バージョンから進化を続け、多数の機能をさらに拡張しており、より複雑な設計に活用いただけます。今回は、Allegroの最新バージョンのいくつかの新機能を、その背景も交えてご紹介いたします。
なお、Allegro SPB23.1の新機能や変更点について、詳細な情報はCadence Online SupportのSPBホームページに公開されている「What’s New」ドキュメントをご参照ください。
◼️沿面距離(Creepage)とクリアランスのチェック
高電圧回路では、電圧が30VAC以上または60VDC以上の場合、沿面距離とクリアランスのルールを確認し、2つの導体間の放電を防ぐ必要があります。沿面距離とクリアランスの測定値は同じこともあります。ただし、コンポーネントの配置方法や基板の不規則な輪郭によっては、これらの測定値が異なる場合があります。下図のように、沿面距離は基板の表面を横切る2つのコンポーネントのパッド間の距離です。対照的に、クリアランスは左側のコンポーネントの金属ヒートシンクと右側のコンポーネントのパッドとの間の距離です。
Allegro 23.1の新しいコンストレイント・チェックを使用して、沿面距離とクリアランスのルールを確認できます。解析モードでCreepageとClearanceチェックを有効にし、Electrical制約条件中のHigh Voltageで設定したルールをネットごとにアサインすることができます。下図の例ではDRCレポートによって、実際の沿面距離は制約距離より短いことが分かります。
その他、異なるレイヤーに配置した部品間の距離も制御できます。下図の.brdファイルでは、赤い部品がTOPレイヤーに、青い部品がBOTTOMレイヤーに配置されています。スロットを通し、プリント基板の厚みを考慮しながら、Creepage DRCのフラグが立っています。スロットがない場合は、次の図のように、基板外形を通して距離を測定します。
DRC エラーを確認するには、Creepage/Clearance Vision を使用します。Vision は、キャンバス上で直接色分けされたグラフィカルなフィードバックを提供します。
◼️Dynamic Shapeのアップデート: Freeze Shapes
CadenceはDynamic Shapeモードのパフォーマンスを重視し、改善し続けています。今回Allegro 23.1では、さらに新しい機能「Freeze Shapes」が登場しました。この新機能をご紹介します。
Dynamic Shapeは、ピンやCline等がShapeと重なっていた際、異ネットのオブジェクトを認識して自動的にVoidを生成するものです。このため、オブジェクトがされる都度、Dynamic Shape形状が自動的に更新されるのですが、この更新を抑制したい場合、従来はShapeのタイプをDynamic ShapeからStatic Shapeに変更する必要がありました。23.1からは、Freeze Shape機能により、Dynamic ShapeタイプのままでShape形状をフリーズさせることが可能になりました。これは、例えばShapeを使用して描かれた重要な回路を保護し、設計意図を維持するための手段として活用できます。
上図のように、左側のshapeがフリーズされると、Dynamic Shapeにclineを追加しても、Voidが発生しません。フリーズしたDynamic ShapeのShapeバウンダリを手動で修正することで、新しいVoidの自動生成を回避しながら現在のVoidを維持することが可能です。
Dynamic Shapeをフリーズまたはアンフリーズするには、Shapeメニューより「Freeze Shape(s)」または「Unfreeze Shape(s)」選択します。また、Shapeを選択し、コンテキストメニューからコマンドを選択することもできます。Dynamic Shapeの情報はstatusに反映されます。
◼️デザインレビューとマークアップ
他の設計者と協力してPCB設計した経験はありますでしょうか?協同作業は、複数の設計者が同一設計に取り組む生産的な方法です。各チームメンバーは別々で作業しますが、チーム間の円滑なコミュニケーションは、設計サイクルの短縮につながることは間違いありません。
Allegro23.1には、マークアップによるデザインのレビューと追跡を可能にする新しいデザインレビューおよびマークアップ機能が搭載されています。 マークアップは追跡コメントとともにデータベースに保存されます。 キャンバスの自動センタリングとレイヤー表示を使用してマークアップを呼び出すことができます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回は、Allegro23.1の新しい機能のほんの一部を紹介しましたが、この他にも、padstack editorの機能改善、structureの機能改善、rigid-flexの機能改善、パッケージの3DXのサポートなど便利な機能の追加・改善が行われております。
新しい機能についてはPCB設計/ICパッケージ設計ブログの方でも随時ご紹介して参りますので、ブログのご購読もよろしくお願いいたします。
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アプリケーションエンジニア 田 宇辰(デン ウシン)
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