データセンター管理用のデジタルツインに関してのご紹介
データセンターを運用するには膨大な情報の管理が必要です。データセンターをデジタルツイン化することで、現状把握が簡単になり、未来の予測も行えるようになります。今回はデジタルツイン化するメリットとその導入方法をご紹介いたします。
データセンターを運用管理していくうえでエクセルシートやVisio等を用いている方がいまだ多く散見され、皆様から以下のようなお悩みをよくご相談いただきます。
- IT管理者がリクエストしてくる設置場所に一貫性がなく、果たして効率の良い管理ができているか不安
- 各々が自分の担当している部分のみしか把握しておらず、属人化している。もっと全体の状況を複数人で共有したい
- 現状の把握が不十分な為、将来やインシデント時の予測ができない
このような問題はデータセンターをデジタルツイン化(実際のデータセンターの物理情報を3Dの仮想空間上に再現)することで、解決できます。
デジタルツイン化することのメリットは仮想空間であることを生かして、現状の把握とデータに基づく現在・未来の意思決定が可能である点です。
例えば、3Dモデルにより直感的に状況把握できることに加えて、登録されている多くの情報データをもとに変更案の比較検討が簡単になります。温度や消費電力のセンサ情報と連携させることで、データセンターの現状把握も可能です。
さらにはCFD解析(熱流体解析)と組み合わせることで熱的な状況の把握、障害発生時や将来を見据えたレイアウト変更といったデータセンターの未来を予測することも可能です。
図1 データセンターのデジタルツインモデル
◼️デジタルツイン化する手順
実際のデータセンターをデジタルツイン化する際、ラック、IT機器、分電盤やケーブルラック等のファシリティ全般を仮想空間に再現します。資産管理に活用する場合は、ラックのレイアウトとIT機器の設置場所、IT機器の種類や管理情報、電力結線やネットワーク配線情報が必要です。また、空調機からの冷却状況を再現する場合は梁、柱、ケーブルラダーや室内の正しい寸法と配置情報といったファシリティ部分の情報も必要になり、これらを正しく配置するには結構な時間と手間を要します。 弊社のデータセンター運用管理向けソフトウェアCadence DataCenter Design Software and Insight Platformは、データセンターに特化しており、これらのオブジェクトがあらかじめ登録されておりますので簡単かつ短時間でデジタルツインを構築できます。
◼️手間と時間がかかるデータ移行を簡単に短時間で!
それでは実際にデータホールをデジタルツインモデルに落とし込む作業に取り掛かりましょう。
一番シンプルな方法は一つ一つ手動で登録することですが、ヒューマンエラーが起こりうるリスクを考慮した上で、膨大な情報量を膨大な時間を費やして作業することは現実的ではありません。
データホールの規模により数ラック単位であればモデルへ情報を落とし込む負担は少なくなりますが、何百・何千ラック単位で管理されている場合、そこに配置されているIT機器も数百から数千にのぼる場合も多々あります。
さらに、上記で挙げたIT機器は多くの管理項目(資産番号、導入日、メーカ名、型番、管理者情報等)を保持していることが多く、情報量はさらに多くなります。
デジタルツインモデルを準備する段階で、管理者が直面する問題は、「どうすれば数多くのIT機器(さまざまな管理項目を含む)をサーバラック内の所定の位置に、適切に配置できるかどうか」です。
デジタルツインモデルがデータホールの管理、将来のレイアウトの検討にとても有益なのは頭ではわかっているものの、これらの高いハードルに尻込みし、従来のエクセルやVisioで管理し続けるのは、非常にもったいないです。
DataCenter Design Software and Insight Platformには上記の手間のかかる作業を、短時間で簡単に間違いなく実施するため、下記のような機能が多数備わっています。
- 豊富なIT機器ライブラリ
- CSVファイルを用いた情報の読み込み
- 他DCIMツールとの連携
①豊富なIT機器ライブラリ
9000種類以上の市販されているIT機器をライブラリに備えており、現在も常に追加し続けています。ライブラリデータにはメーカのカタログスペック(型番、寸法、定格電力、吸排気口、重量等)がすでに登録されており、すぐに用いることが可能です。また、管理項目や他の情報も任意で追加することもできます。
図2 機種/メーカー/型番により異なる吸排気位置
②CSVファイルを用いた情報の読み込み
上記ライブラリと組み合わせて、CSVファイルを使うことで配置は驚くほど短時間で済みます。従来使用していたエクセル等の表データから必要な情報を抜き出し、DataCenter Design Software and Insight Platformの豊富なライブラリデータと組み合わせて使用できます。最低限必要な情報は「①どのラックの、②何番目のスロットに、③どのメーカの、④どの機器があるか?」のみです。
図3 CSVフォーマット例と読込み前後の比較
③他社DCIMツールとの連携
他社DCIMツールとネットワークプロトコルを用いてラック内のIT機器情報をそのまま同期させることができます。他社DCIMツールで用いていたIT機器情報をSNMPといったネットワークプロトコルを介して同期させ、CSVファイルの読込みの時と同様DataCenter Design Software and Insight Platformの豊富なライブラリデータと組み合わせることでサーバラックへの配置はソフトウェアが自動で行い、常に最新の状態に保つことができます。
◼️まとめ
文頭にてご紹介した「よくご相談いただく運用管理の問題」は、データセンターをデジタルツイン化することで解消されます。
今まで、IT管理者が自身の管理作業の容易さなどでリクエストしてきていた新たな設置場所の選定も、図4のようにラック単位で電力・空きスペース・重量・冷却能力等の現在のキャパシティ状況により定量的かつ効率的な場所の選定が可能になります。
図4 IT機器が設置可能なラックの識別(電力、スペース、重量、冷却能力等で判断)
また、詳細に再現されたデジタルツインモデルのおかげで、現在のデータセンターのリソースキャパシティの現状把握、未来予想も容易になります。
図5 データセンターの運用状況グラフ(エネルギーコスト、消費電力使用量等)
これらの今まで担当者ごとに管理していたデータを複数人で共有し、よりよい意思決定につながります。
図6 データセンターのデジタルツインモデル(熱と空気の流れの把握)
さらには、デジタルツインモデルを用いることで、より物理学に基づいたCFD解析ができるようになります。普段目には見えない熱や空気の流れを可視化することで、障害発生をシミュレーションして事前に対策することも可能です。
従来のツールではなしえなかった多角的な運用管理がDataCenter Design Software and Insight Platformで実現可能です。データセンターを少ない労力でデジタルツイン化することでさらに得られる情報量が増え、多角的な視点から資産管理が簡単になります。管理しにくさを感じていらっしゃる方はこの機会にぜひ弊社までご相談ください。
お問い合わせ窓口:
日本ケイデンス Future Facilities Sales
Tel:045-475-7944
E-mail:japan_ff_sales@cadence.com
Future Facilities Sales
Principal Product Engineer
引地 隆幸
Latest Issue
Archive
2023 Issues
2022 Issues
2021 Issues
2020 Issues